前回までは、アメリカの蒸気機関車など古い時代のお話
でしたので、時代をちょっと現代に戻したいと思います。
日本で鉄道の花形と言えば、やはり新幹線を挙げる方
が多いように思います。
では、アメリカには日本の新幹線にあたる鉄道は
あるのでしょうか?
厳密に言うと「No」という答えになるかもしれません。
しかし、しいて挙げるなら、また新幹線と比較するなら
アムトラック(公社)の「acela express」以外にはないでしょう。
なぜ「しいて」なのかをこれからご説明いたしましょう。
その前に、みなさんそもそもこの「acela」をどういう風に発音
するのが正しいと思いますか?
検索ワードとしては通常「アセラ」の表記が一般的ですが、
正確には「アァセラ」の方が実際に近いです。しかも、アクセントは
「ア」にあるのではなく「セ」にあります。
実は「acela」の正しい発音の仕方は、本国アメリカでも話題になるほど
読みずらい単語のようです。それもそのはず、これは加速という意味の
「acceleration」と卓越したという意味の「excellence」の合成造語だから
なのです。 ちゃんと辞書にも載っていて、発音記号ではやはり「アセラ」
ではなく「アァセラ」。 実際に発着駅での構内アナウンスではどのように
聞こえるのかが気になったので、動画サイトで検索して調べてみると、
これが微妙でまあ「アセラ」と「アァセラ」の中間ということにしておきましょう(^^
加速の意味の原語を大切にするため、アムトラック関係者の間で「アクセラ」と
呼ぶ部署もあるようです。
あれれ、前置きが長くなってしまいましたが、さてこのacela、なぜ新幹線とは
呼べないのかはそのスピードにあります。 ご存知の方が多いかもしれませんが
acela車両の製造にはフランスの超有名高速鉄道TGVの技術が導入されています。
よってacelaも最高速は時速240キロ越えを誇る正真正銘の超特急なのです、
車両スペック自体は。
acelaが運行されているのは、アメリカ北東部のボストン⇔ワシントンDC間なのですが、
その距離は一体どのくらいだと思いますか? その営業距離は約734キロメートルで、
これはちょうど東京から岡山までの新幹線の営業距離約733キロメートルとぴったり
同じなのです。 で、時刻表のデータによると、例えば午前11:10発「N700系のぞみ」は
14:30には岡山に到着です。 一方のacela express にもボストン発午前11:10発が
ありました。 ところがワシントンDCに到着するのはなんと17:52なのです。
のぞみが岡山に到着する頃、acelaはまだ中間地点ニューヨークの手前です。
計算してみると、のぞみの平均時速が時速220キロに対し、acelaは時速110キロと
ちょうど半分です。 なので、岡山まで3時間20分で走り抜けるのぞみに対し、acelaは
約6時間40分! よって、acelaは所要時間的には超特急新幹線というより
在来特急と考えた方がより正しいわけです。
その理由はいたって簡単で、在来線から完全に独立した路線を確保している
日本の新幹線に比べ、acelaが走行する経路の多くには在来線が含まれるからなのです。
それ故、徐行区間や在来線のタイムスケジュールの影響をまともに受けることとなり、
悲しいかな、せっかくの車両スペックを生かし切れない宿命を背負ってしまっているのが
現状なのです。
次回は、acelaの編成や車両に関するお話を少しだけお届けいたしますね。
それではみなさま、次回までさようなら(^0^)/