窓にこだわる。 - 紫外線(UV)硬化型樹脂を使った窓つくり -

本日もケンズレールロードに

お越しいただきありがとうござ

います。

 

先日、ケンズタウンにてフォッ

クスバレー社の新製品である

B&O鉄道のカブースを発売

いたしました。

ここのところ同社は標準的な

製品が多かったのですが、

これは久しぶりに気合の入っ

た製品です。

各所の安定した細線手すり

やボディサイドの微小な後付

けマーカーランプなどこだわ

った形跡がはっきりとわかり

ます。

 

「そやそや、あの窓のつくり

かたはたぶんはじめての

やりかたちゃうん?」

 

確かではないけれど、おじち

ゃんもそう思ったから商品説

明にも作り方の仮説を書か

せてもらったよ。

 

内側から透明シートを張るわ

けでもなく、また窓ガラス凸部

をもつ透明プラパーツをはめ

込むタイプでもない新しい手

法のように思います。

窓ガラスと窓枠に一部の隙間

もないその手法は、以前に自

分で試してみた手法に似てい

ると感じました。

 

「窓に液体をながしこむやつ

やろ?」

 

そう、液体と言っても特殊な

ものでね、紫外線を当てると

固まるUV硬化型樹脂と呼ば

れる液体なんだよ。

今では、工芸用や模型用とし

て簡単に手に入るようになっ

たけれど、以前は工業用で

コンパクトディスク(CD)など

の保護膜としても使われたり

しているんだ。

 

市販の紫外線(UV)硬化型樹脂。

これは自分が今もっているもの

で、左が模型用、右が工芸用と

して販売されているものです。

製品によって、液体時の粘度

や硬化後の硬さや色味が異な

っていますので各自のお好み

で選ぶことができます。

最近では、ペン先にLED紫外

線発光素子付きの「ボンディッ

ク BONDIC」という人気商品

でもお馴染みになりましたね。

 

以前自分は、オリジナルのペン

ダントやマグネット(冷蔵庫には

るやつ)をこの樹脂を使って作

っていました。

 

「両手がすっぽり入るネイル用

の紫外線照射器までこうてたな

ー、おじちゃん 笑」

 

あれは便利なんだよ。 車両に

使うときも全体がすっぽり入るし、

タイマーも付いていて硬化時間

の調整ができるんだよ。

ちなみに太陽光でも晴れの日

なら3~4時間程度で硬化した

と思うよ。

 

その後、自分がずっとこだわっ

ているNゲージ車両の窓への

応用を思いつきました。

特に斜めから見ると目だってしまうボディの厚み。

これは、内側から透明シートを

張るタイプの窓ですが、窓ガラ

スが本物らしく見える反面どう

してもボディの厚みが目立って

しまいます。

これを改善する手法として窓ガ

ス部分だけ出っ張りを作った透

明プラパーツを内側からはめ込

む手法が一般的です。

窓ガラスの形に凸部をつくり内側からはめ込むことでボディの厚みを隠します。

けれども、この手法にも残念

な点があります。

ボディ厚みの代わりに窓ガラ

ス部が肉厚になるため、特に

斜めから見た場合にその厚

みが光の歪み方でわかって

しまい、薄い窓ガラス感が失

われてしまいます。 また、

窓ガラス凸部と窓枠(ボディ)

の間に黒く見える隙間もで

きてしまいます。

 

「おじちゃんはこまかすぎるん

ちゃうの? そこそこ窓に見え

たらそれでええやん (^^ 」

 

そうかもしれないね(^^;;

けれどね、今のような窓の

作り方はもう半世紀以上も

基本的には変わっていない

から残念で仕方ないのだよ。

例えばマイクロサイズのフラ

ッシュメモリーやスマホを見

てごらん、公衆電話さえなか

なか見られなかった時代か

ら、50年でこんなにも様々

な技術が革新したのに、

Nゲージの窓が同じままなの

は何かもったいないような気

がするんだよ (^^)

 

「変わらへんということでは

なんか車のワイパーも

おんなじ気がすんなー (^^ 」

 

おー、そうだねあれも電気自

動車の時代になっているのに

なかなか次の世代になれない

ねー(^-^)

 

そんな思いの中、今回のフォッ

クスバレーの製品を見たときに

「おやっ」っと思ったのでした。

蓋を開けてみれば実は従来の

手法なのかもしれませんが、

外観は明らかに異なっています。

これは少なくとも同社の技術者

が現状の窓に決して満足してい

ないことの表れであり、それが

自分にとっては嬉しかったの

でした。

 

「そやけど、おじちゃんは

なんでその特別な液体を

つこてるかもておもたん?」

 

それはね、やったことのある

人ならわかるとおもうんだけ

どね、窓ガラス部の枠(ボデ

ィ縁)への密着の仕方と、

窓ガラス表面のうねり方か

なー(^_^)

 

以前に実際にやってみたサン

プルがあります。

試作品のうちのひとつですが、まあまあ上手くいったほうですかね(^o^;)

作り方は簡単で、まず窓(ボデ

ィ)の内側に表面が平らなシー

トを貼り付けます。 この部材

の表面性が窓ガラス裏面の

平滑性を決定することにな

ります。 あとは、表からシリ

ンジ(注射器)を使ってUV樹

脂を丁寧に窓のくぼみに流し

込みます。

この時大事なことは、注射針

はできるだけボディ縁に接触

させず、液体の表面張力で

自然に外へ広がり引っ付く

のを待ちます。 また、気泡

が入りやすいので針先で空

気を巻き込まないよう慎重に

樹脂を注入します。

液体樹脂は紫外線を受け架

橋重合と呼ばれる反応を起こ

し硬化して行きます。 硬化後

は体積が多少減少しますので

液体充填時に表面が平面で

あれば硬化後は少し凹上に

なります。

上の写真では、その体積収縮

を見込んで充填時に樹脂を

盛り上げすぎた結果、硬化後

も凸レンズのようになってい

ます (^_^;

けれども窓縁への密着感は

完璧に近く、全く隙間があり

ません。

 

「そやけどやっぱり厚みのせい

で光がゆがんでるなー (>_<) 」

 

そうなんだよ、これをもう少し

斜めから見るとさらにそれが

はっきりとわかるよ。

斜めから見ても窓ガラスと窓縁との隙間は全くなく美しいですが、窓ガラスが肉厚すぎて光がゆがんでいます。

そこで、樹脂の肉厚をできる

だけ薄くするために、手法を

逆転させてみました。

つまり、樹脂塞き止め用の

平滑なシートをボディ外側に

密着させます。 今度はボディ

内側から窓の凹みへできる

だけ少量の樹脂を充填して

みました。

外側の窓ガラス表面は平坦になったものの、樹脂量が少ないと窓縁への張り付きが不安定になり樹脂層自体が平面になりにくい。

結果は大失敗です ・笑・

樹脂量を少なくするとかえ

って窓ガラスの均一性が

損なわれ、また、窓縁への

張り付き方も不安定になり

均一な透明感が完全に犠

牲になりました。

この方法で薄く均一な樹脂

の膜を作るには、かなり粘

度の低いサラサラの樹脂が

必要になると思います。

 

「そんなサラサラのやつは

ないかもしれへんなー。

サラサラにするとかたまら

へんとか。」

 

それに、さらさらになると

塞き止め用の部材もボディに

ピッタリと密着させないと液が

浸み出てしまうかもね。

 

今回は同じ樹脂で、横長の窓

でも試してみました。

やはり窓縁への密着感は実物どおりのリアルさがありますね。

窓の正面から見ると、内部の

椅子も見えてわりにきれいに

感じますね (^0^)

窓枠と窓ガラス(樹脂)が

ぴったり密着している外観は

かなりの好印象です。

けれどもやはり肉厚による

光のひずみが大きいですね。

 

「なんか窓ガラスが曇って

へん?」

 

実はね、これは手抜きで

内側の塞き止め用に普通の

セロテープを使ったんだよ。

硬化後にセロテープを剥が

したら粘着剤が樹脂と一体

化していて曇ってしまった

んだよ (^-^;

 

斜めから見てみると、

ひずみの解消には樹脂を少量で薄く均一な膜を作ることが必要ですね。

樹脂の厚みのせいもあり

光の乱反射で窓が白っぽ

くなっています。

 

「そやけど、これだけアップ

にしても窓ガラスのまわりに

すきまがないんは本物の

とおりでめっちゃきれいや

なー (^o^)/ 」

 

そこがこの方法の最大のメ

リットのようだねー (^_^)

 

もしも、もっと粘度の低い

UV硬化樹脂があるなら

薄くて平らな窓ガラスが

できそうですが、市販の

ものではこれくらいが限

界のようです。

 

「それとおじちゃん、これの

耐久性とかはだいじょうぶ

なん?」

 

やっぱり樹脂だからね、何年

も時間が経つと必ず劣化はす

るよ。 まず、多少色が黄ばん

でくる可能性もあるし、もろくな

って窓枠から剥がれてしまう

かもしれないからそこは事前

に何か対策を考えておく必要

があるかもね。

 

会社員時代には頻繁に信頼

性試験でお世話になりました

が、加速試験装置(高温高湿

槽)があれば数週間で劣化の

度合いがわかります。 けれど

もこの装置は高価で、メンテナ

ンスも大変ですので、今は無

理ですね ・笑・

あと、この樹脂は基本的には

接着剤ではありませんから、

硬化後に樹脂部に強い力を

加えるとボディから抜くことが

できてしまいます。

何十年もすると樹脂が劣化

してボディから簡単に外れて

しまう可能性もあるわけです。

また窓ガラスを薄くするとま

すますボディとの密着力は

小さくなるでしょうから、後もう

一歩何かの工夫が必要にな

るでしょう。

 

さて、今回は特殊な樹脂を

使った窓つくりのお話でした。

自分は、「窓は客車の(外観の

)命」、くらいに考えていますの

で、これからもリアルで美しい

窓を追い求めてもっといい

方法がないか考えていこう

と思っています。

 

それではみなさま、

また次回までさようなら(^0^)/