虚の記憶。

そこはまるで凍りついた別世界でした。

入ってもだれもこちらを振り向くことはなく

声もないただ静けさに包まれた空間。

立ってはいるけれどうつむいたまま

作業の手を止めることなく動かない。

整然と白色光下に清潔に置かれた

品物たちが

かえってこの冷徹な空気感を増幅

するかのようだ。

 

子供の頃、ショーウィンドウの前に

長い時間しゃがんでずっと眺めていました。

そして、背中にはちゃんとその存在を

いつも感じながら。

その空間でも全く同じように

しゃがんで中を眺めてみました。

目に飛び込むものは見慣れた

親しみの湧く情景でしたが、

あることに気が付いた途端、涙が

こみあげてきました。

もう背中にはいつも感じていたものが

・・・ない・・・。

声が聞こえたような気が

しました。

「もうここには来なくていいよ・・・」

 

どうして蒸気機関車が好きなのかを

話してくれたことがありました。

坂を上るときなんか、

まるで人間のように息使いが

苦しそうになるだろ。 一生懸命

耐えてがんばっている姿が人間に

似ているんだ・・・人間っぽいだろ。

 

「もうええよ、 思い出すのは

そのくらいにしとき」

 

うん・・・、でもね・・・、自分が

ずっとずっと、

もらい続けた感じさせてもらい続けた

鉄道模型への感触が

何か踏みにじられたような

そんな気持ちになったんだよ、そのとき。

叫びたくなった・・・、

「俺がもらい続けてきたものは

こんなもんじゃねーーーっ!!

こんなんとちゃう!・・・絶対ちゃうから」

 

「わかったから、もうええよ。

もうやめとき、 ・・・やめとき・・・」

 

今日は、朝から雨だよ、ずっと。

そのせいだろうか、

忘れようと思っていた光景が、

肌を刺す冷たさが

蘇ってきてしまいました。

少し心が疲れているのかも

しれませんね、

もうすぐ春だというのに。

 

「おじちゃん、そんな柏原さん風に

なってんと

お気に入りのナイアガラでも見とき!」

 

あーーー、いいよねー

あの陰のあるスマートさと

力強さ・・・。 ・・・いい、いいよね。

 

「もう今日は寝とき、おじちゃん。

ニョンニョンでもして。」

 

それはきみでしょ ・笑・

こっちはまだお仕事中なんだから。

ではまた仕事に戻りますね。

今日はちょっと暗い感じで

すみませんでした<(^_^;

 

それでは皆様、また次回まで

さようなら、

「ほなまたねー」

ここはきみ出てこなくていいから(^^;

それではまたー(^0^)/