乗り物に共通する基本性能と言えば
やはり「走る」「止まる」「曲がる」でしょう。
この中で最も重要かつ難しい技術が
「止まる」であるとする専門職の方も
多くいらっしゃるのではないでしょうか。
かのポルシェ製スポーツカーは
そのブレーキ性能で超一流と謳われ
ています。 世界の市販スポーツカーの
中でも時速200キロ以上からフル制動
を行って安定して静止までたどり着き、
かつ何度連続してそれを行っても
その性能が維持されるものは
そう多くは無いと言われています。
いえいえ、今日は車のお話ではなくて
蒸気機関車のお話です。
蒸気機関車が鉄道輸送の主役として
定着したころから、その制動方法は
エアブレーキシステムでした。
圧搾空気の圧力を利用して車輪に
摩擦を加えブレーキをかける
しくみです。 そしてその圧搾空気の
担い手こそがエアポンプ、または
エアコンプレッサーと呼ばれる
装置になります。
ウェスティンハウス(Westinghouse)社製
に代表されるエアポンプは、エアブレーキ
システムを採用している蒸気機関車で
あれば必ずどこかに搭載されているはず
です。 そしてその外観は、見ればすぐ
「あー、これか!」というお馴染みの
装置です。
この外観は蒸気機関車らしさを表す
必須アイテムの一つとさえ感じて
しまいます。
少なくともアメリカ型蒸気機関車では
その搭載されている場所(位置)が
大きく3種であることがわかります。
もちろん設置場所に関する規則などは
基本的に無いと思われ、機能を阻害
しない範囲でメーカーや鉄道会社の
お好みであったように思われます。
以下がその3種です。
一つ目は日本型でもお馴染みの動輪上の
ボディサイドに設置されているケースです。
大抵の場合はポンプは左右用に2基ですので
左右に一つずつですが片側に2基搭載する
ケースも少なくありません。
これらは、マレー型で有名なノーフォーク・
ウェスタン鉄道のY(Y-1~Y-6)クラスシリーズで
採用されています。 Y-3あたりまでが片側2基
搭載でそのあと両サイドタイプになっていた
ように思います。
そしてかのサザンパシフィック鉄道の
キャブフォワードにもこのタイプが
あります。 AC型で言えばAC-1~AC-5
までがボディサイドタイプです。
二つ目はボイラー正面のヘッド面に2基搭載
されているケース。
このタイプが割に多く、人気の
アティキュレートタイプ(連結タイプ)で言えば、
チェサピーク&オハイオ鉄道のH-8アラゲイニィ
(2-6-6-6 Allegheny)を筆頭に、同じくH-7
(2-8-8-2)、ノーザンパシフィック鉄道の
Zクラス(Z-6、Z-7、Z-8いずれも4-6-6-4)、
そしてキャブフォワードのAC-6~AC-12まで。
余談ですがこのうち唯一「AC-9」のみが
バックウォード・キャブフォワード
(キャブバックウォード)であり
ライマ(Lima)製なのです。
ですので、ACシリーズの中では
唯一AC-9のみ先頭正面からエアポンプを
拝むことができるのです。
そして最後がフロントアンダータイプ。
これは一番外から見えにくい場所で、
先輪の上、フロントウォークウェイの下に
なります。 このタイプは通常、
正面には金網などが設置されるため
正面から見えずサイドからかろうじて
見える場合もあります。
ボルチモア&オハイオ鉄道の
EM-1(イエローストーン2-8-8-4)、
ユニオンパシフィック鉄道の
ビッグボーイやチャレンジャーが
このタイプです。
さて、これらの3タイプですが、
一応流行のような時代依存性が
あります。
サザンパシフィック鉄道のAC型を
見ればお分かりのとおり、
1930年製造のAC-6から
搭載位置がサイドからヘッドに
変わっています。
また、フロントアンダータイプは
製造年が1940年代の機体に
多くなります。
もちろん、性能的なことではないよう
なので、メーカー(アルコ、ボルドウィン
ライマ)や発注した各鉄道会社により
まちまちではありますが、基本的には
1920年代すでに標準であった
ボディサイドタイプの後、ボイラーヘッドタイプ
が登場し、そして最後にフロントアンダー、
という流れです。
さて皆様的にはどの場所がお好みでしょうか?
場所だけではなく、この装置自体にも
興味を持たれた方は、
「Westinghouse 8 1/2″ Cross Compound Air Pump」
などが有名どころのようなので
ご研究下さいませ。 プレシジョン・スケール社
(Precision Scale Co.)では
Nゲージ用精密エアポンプ(パーツ単体)として
上記モデルを販売しています。
それでは皆様、また次回までさようなら(^0^)/