言葉はいらない・・・。

ケンズタウンをご利用いただいている皆様には

先週の突然の長期休業にて多大なご迷惑、ご心配

をおかけいたしまして誠に申し訳ございませんでした。

 

父が体調を大きく崩しましたのは約2か月前

であったように思います。 一進一退の容態の中

先月実家に戻った時のことです。

彼が鉄道模型の走行に使っていた一階の和室に

旧い客車が一編成、線路上にたたずんでいました。

それまでは、来客など特別な時以外は

車両が置きっぱなしになっていることは

あまりなかったのです。

その編成はオハ31系客車でキュウロクが

先頭に置かれていました。

 

実は私が実際にこのフル編成を見たのは

これが初めてです。 話はずっと以前に

聞いたことはあり、箱に入った状態では

何度も見ていたのですが。

彼が中学生時代に乗っていた客車だと

聞いていました。 彼が一番好きで

大事にしていた客車であることも。

実物は、なんでも日本製ではじめての

鋼鉄製ボディなのだそうです。 それ以前は

木製だったのだそうです。 そして、

その模型も床から上はペーパー車体

です。 手に取ってみるとそれはそれは

美しく繊細に組み上げられており、塗装も

まったくその材質がわからないほど

美しく仕上げられておりました。

 

けれどもそのとき既に彼は入院状態で

あったためそれらはやけにひっそりとした

空気の中にありました。

そんな車両たちがそんな風に置き去りにされている

状況を目にすれば、誰しも思うこと考えることは

同じですよね・・・。

 

病院へ見舞に行っても、私は特にそのことには

触れませんでした。 そしてただ、彼の状態を

確かめるためだけのために、できるだけ自然に、

今までのように何も知らないふりをして聞きました。

どうしてキュウロクのナンバーには96の前にも

数字があるのか?・・・ と。

 

彼は全く以前と変わらぬ口調でその理由を

丁寧に説明してくれました。 けれども

彼の頬はすでに痩せこけ、目には殆ど

輝きがありませんでした。

 

家に帰った後、私はその車両たちを

一両一両元の通りに丁寧に紙でくるみ箱に

戻してやりました、紙でできている箱の上に

涙が落ちないよう気にしながら・・・。

 

互いに心を注げる同じものがあるなら

言葉はなくとも思っていることはわかる、

いやわかってしまうのですね。

 

彼の若いころからの口癖でした、

「自分の棺桶には絶対に鉄道模型を

いれてくれるなよ!(^_^)」

と。