蒸気機関車の全盛期、大きな鉄道会社が
保有していた自社工場(ショップ)以外では、
アルコ社(Alco)、ライマ社(Lima)、そして
ボルドウィン社(Baldwin)がトップ3メーカー
でした。 けれども、20世紀に入ると徐々に
エレクトロモーティブ型ディーゼルが台頭
し始めます。 各社は全く異分野への
脱皮に苦労が続くことになります。
例えばこの中のボルドウィン社は
鉄道ファンから貴重な愛称をもらった一連の
ディーゼル機関車を製造しました。
その愛称が「ベイビーフェイス(Babyface)」と
「シャークノーズ(Sharknose)」なのです。
一般にはベイビーフェイスと言えば
同社の「DR4-4-15」型を言い、
シャークノーズと言えば「RF-16」型
を指しますが、実際の事情はもう少し
込み入っています。
ボルドウィンがEMDのE7やF3の大成功に
対抗して、DR4-4-15を製造し始めた
のが1947年頃です。 「DR」は
「Diesel Road」から付けられた型番です。
最初の「4」は総軸数で、B-B配置です。
後ろの「4」はトラクションモーター数、
大抵の場合は駆動軸数と一致します。
そして最後の「15」は1500馬力の15。
形式として「DR4-4-1500」と
記述する場合も多々あります。
このDR4-4-15型の初期製造型は
前述のベイビーフェイスと呼ばれる、
EMDのEユニットを崩したような???(^^;
顔をしています。 Eユニットよりも
キャブウィンドウの縦サイズが長めで
個人的にはちょっと古めかしいデザインの
印象を受けます。 鉄道ファンからは
この愛称をいただいていますが、
そのネーミングの感覚は恐らく日本人
のそれとは大きく異なるように感じますが
主観的なことなのでなんとも申せません。
初期型はニューヨークせセントラルなどに
納入されていますが、実際当時この外観
デザインはあまりにも不評だったのです。
そこで、1949年から50年製造の後期型には、
角張った精悍な外観に変貌を遂げたのです。
こちらは主にPRR(ペンシルバニア鉄道)に
納入されましたが、RF-16型ではありませんが、
DR4-4-15のこのデザインもシャークノーズ
と呼ばれるわけです。
実はボルドウィン社はこのRD4-4-15
以外にも同時期に、RD6-4-15(00)、
RD6-4-20(00)も製造しています。
こちらは前後にA-1-A型3軸台車を
装備した全軸数「6」、けれどもトラクション
モーターは4つで変わっていません。
「A-1-A」つまり、駆動輪は前後の
2軸のみで真ん中は駆動していません。
そして、1500馬力仕様と2000馬力仕様
がありました。
DR6-4-15もニューヨークセントラルが
購入していますが外観デザインは全て
ベイビーフェイス! DR6-4-20を
購入したお得意さんのPRRは初期品こそ
「あかちゃん顔」でしたが最後には
「サメ顔」のDR6-4-20を獲得できた
ようです。 このDR6には特殊バージョン
が存在し、「DRX6-4-2000」という
形式名が与えられています。
「ダブルキャブ(Double Cab)」と呼ばれる
前後に運転席があるタイプでです。
機関車をターミナル駅で反転させる必要がない
メリットがありますが、前後とも「ベイビーフェイス」
だったためか大きな販売量には至らなかった
模様です。
これらDRシリーズの集大成?がご存じ
「ムカデ:センチピード(Centipede)」なのです。
ユニオンパシフィックが注文したとかしなかったとか
いろいろな説があるようですが、実際に
量産品が運行された鉄道はペンシルバニア鉄道
だけだったようです。
その正式型式は「RD12-8-3000」または
「RD12-8-1500/2」です。
国鉄のEH10と同様で、2ユニットが
永久カップリングしているデザインです。
前後部に2軸の従輪台車を有し、
駆動4軸8輪台車を2つもつ
「2-D-D-2」と表記される
一両1500馬力ユニットが
2両カップリングしています。
ペンシルバニアのセンチピードと言えば
泣く子も黙るほど有名ですが、
顔つきはやはり「ベイビーフェイス」タイプ
でした。 けれども、当時のPRRの
ペイントスキームにはなぜかシャークノーズタイプ
よりしっくりくる感じがするのは私
だけでしょうか?(^_^?
これらのRDシリーズが製造されたのが
主に40年代最後期ですが、この年代は
EMDがE7、E8そしてF3、F7でとてつもなく
隆盛を極めた時期です。
E7,E8はAユニットだけでもトータルそれぞれ
400両以上を販売し、F3Aでは1000両越え、
F7Aに至っては軽く2000両を超えた製造数量
でした。
そこでボルドウィン社が1950年に新発売したのが
貨物用ディーゼル、一般に「シャークノーズ」と呼ばれる
「RF-16」型なのです。 表記方法が変更され
「RF」は「Road Freight(貨物)」から、「16」は
1600馬力からきています。 足回りはB-B型です。
こちらは最初から
シャークノーズ顔だったせいか評判もよく
るニューヨークセントラル、ペンシルバニア、
ボルティモア&オハイオなどに販売されましたが、
製造終了の1954年までにAユニット、Bユニット
合わせて約160両だったようです。 EMDの
驚異的な躍進の勢いがわかりますね。
余談ですが、このRFタイプにはアルゼンチンに
納入されたRF-615FというC-C型1500馬力仕様
があるそうです。
そうそうもう一つ、調べているときに見つけたのですが、
ボルドウィン社は「RP-210」というかなりいかした
アルミボディの未来列車用ディーゼルも
製造したようです。 先日ここで書いた
「エアロトレイン」、このGM製列車に引き続いて
プルマンなどが製造した「Train-X」で、実際に
NYCが運行させた「Xplorer」の先頭牽引機です。
以上、画像が全くなく申し訳ないのですが、
製造会社名と形式で画像検索していただけると
必ずご覧になれますので、ご興味のある方は
調べてみてください。
それでは皆様、また次回までさようなら(^0^)/