特に縮尺率の大きなNゲージでは
窓をいかに上手に表現するかは
そのモデルの印象を大きく左右
する重要なファクターであると
思います。 特に窓の多い客車
では窓が命と言っても過言では
無いかもしれません。
私が子供のころ、グリーンマックス
の初めての組立済車両、そうあれは
近郊系111系湘南色だったように
記憶しています。 その当時、関水金属
では111系は未発売、確かTOMIXも
まだ登場していなかったかもしれません。
自分が最寄りの駅から大阪や神戸に
行くために乗っていた身近な111系
だけに、手にした時の何とも言えない
嬉しさは今も思い出せるほどです。
そして、雑誌の特集でも読んだのでしょうか、
その窓周りの「Hゴム」凸部をグレー色で
彩色したのを覚えています。
当時は窓と言えば、大抵窓周りに
Hゴムの表現として凸部がありましたが、
当初は彩色されていませんでした。
初期の関水金属製品ですら
凸部のみの無彩色で、外観がなんとも
物足りなかったのです。 けれども
しばらくすると、各社、Hゴム凸部を
グレーやシルバーで彩色した製品を
発売するようになったのでした。
なんだかおもちゃから一歩踏み出した
ような外観上の大きな進歩でした。
最初に言ってしまいますが、窓を
表現するポイントには大きく3要素が
あると思います。 これは日本型で
あろうとアメリカ型であろうと、また
ヨーロッパ型でも変わりはありません。
1.Hゴム(又はサッシ)の表現方法。
2.ウォール(側面壁)厚の処理。
3.窓ガラスの均一、透明性。
この3つの表現力で、車両の印象は
いかようにもなります。
Hゴムに関しては、さらにその色合い、
凸部の出っ張り高さや幅がポイント
となります。 えっ?何も難しいことはない、
実車通りにすればいいだけじゃ?
と思われるかもしれませんが、
事はそう簡単ではありません。
例えばHゴムの幅ですが、これを
Nゲージで150分の1なり
160分の1で造形することは
コストを考慮すると非常に難しい
ことなのだと推測します。
ですから実際の模型では実物より
かなり幅広のHゴムにならざるを
得ません。 この幅広のHゴムに
色を付けるとベース色の色にもよる
でしょうが、車両全体の印象に
実車では考えられないほどのかなり
大きな影響を及ぼします。
実車同様の彩色を施すと、求める
全体印象からかけ離れてしまうことも
あると思います。
ボディ材料に一体成型のプラスティックを
使用すると、どうしても壁厚が大きくなって
しまいます。 そのあたり、自分はプラ成型
のエンジニアではないので詳しいことは
わかりませんが、40年も変化がない
ということは、諸々の条件の制約で
薄くできないのでしょう。 その点では
ブラス製品に分があます。 けれども
逆にブラス製ではHゴムやサッシの
表現がより困難になり、客車では
大抵Hゴムは割愛されています。
プラ板厚をカバーするために
考え出されたのが、窓用の透明
プラスティック板を窓部だけ出っ張らせる
手法です。 さらにHゴムやサッシをボディ
ではなくこの窓側に成形してシルバー色などで
彩色までするという技法が登場しました。
当初は、成形精度の問題で、Hゴムやサッシと
ボディの間に大きな隙間ができていた製品も
ありましたが、未だメーカーによる差は
あるものの次第にさほど気にならない程度へと
進化しました。
板厚をカバーするこの技法は、
もう登場して30年以上は経過して
いますが、現在も活用されていますね。
さて、肝心の窓ガラスですが、
本当の初期は窓ガラスはありません
でした。 そのうち、薄手の透明プラ板を
内側から貼り付けるようになり、
そして前述の窓凸部付透明プラ成形品
へと変わってゆきます。 ガラスに見せる
ポイントの透明度(透光性)の均一性では
薄いプラ板が一番なのですが、
側壁厚隠しで成形品が使用されるように
なると、窓ガラス自体にかなり厚みが
あるため、ボディと隙間がある瓶底メガネ
のような窓ガラスになった時代もありました。
あーっと、前置きが長くなりました。
とにかくまずは目指すべき実車の観察を
してみましょう。 ここでは1930年代以降の
ストリームライナー用客車を見てみます。
これらはいずれも、当時主流であった
プルマン(Pullman)製、バッド(Budd)製の
客車たちです。 すぐに気が付くのは
窓周りのHゴム幅は非常に薄く、また
窓ガラスは殆どボディ面と面一である
かのように見えることでしょう。
Hゴムをさらに拡大して見てみましょう。
Hゴムの色は黒や濃いグレーが多いようです。
実車はHゴム幅が非常に狭いので気になりませんが、
Nゲージの幅広Hゴムにこの色で彩色してしまうと
全体の印象が非常に暗くなって幽霊列車
のようになってしまいます。
実車でもHゴムが白っぽく見える車両も多く
ありますが、これが明るいグレーなのか銀色
なのかは写真では確定できません。
けれども、遠目で銀色のアルミサッシのように
見えている枠も、写真のように、少なくとも
当時はアルミではなく白っぽいHゴムで
あったことがわかります。
厳密には、実車の窓周りの処理方法は
製造された年代とメーカーによっても異なります。
いずれにしても、この窓周りの黒っぽさや
白っぽさの程度は光線の具合や
見る角度によっていかようにも
変化しますので、モデル化するときの
色選定は車両の仕上がり感にも大きく
影響するだけに非常に難しいのではないかと
思われます。 さらには、見た目の印象は
見る人の感性によっても様々であるため
窓造形にどんな技法を用い、どんな色を
選択するかは、そのメーカーのセンスや
方針が色濃く反映されるのかもしれません。
これは窓ではなく室内装備なのですが、
窓から見えるものなので一応当時の実物を
ご覧ください。 そう、ストリームライナーには
必ずといっていいほど備え付けられている
日よけブラインドです。
それでは最後に、4社だけですがメーカー各社の
窓表現センスをご覧ください。
いかがでしょうか、皆様の感性に一番ぴったりの窓は
どれでしょうか?
それでは皆様、また次回までさようなら(^0^)/