私が幼いころ、つまりまだカトーさんのユニトラックが
発売されるずっと以前、自分は父からもらった古めかしい
紙箱に入った線路をつないで使っていました。
確かその黄色っぽい箱には「Minitrix」と書いてあった
気がするのですが確証はありませぬ。
現在私が使用しているNゲージ線路は主に2種です。
ユニトラックとアトラスさんのCODE55です。
ご覧になるとおわかりのように道床の有無は
ともかく、同じ線路幅でもかなり印象が違います。
一目見てわかる違いはレールの高さと枕木(Tie)
の間隔です。
デジタルノギスでレールの高さと枕木の間隔を
測定してみると、
ユニトラック: 高さ約2.0mm Tie間隔約5.0mm
CODE55: 高さ約1.4mm Tie間隔約2.9mm
でした。
さてこれらの実測値にNゲージ(アメリカ)の縮尺
で原寸(160倍)にしてみましょう。
ユニトラック: 高さ約32cm Tie間隔約80cm
CODE55:高さ約22cm Tie間隔約46cm
となりました。もちろんユニトラックに関しましては
本来日本でのスケールでは150倍にすべき
なのでしょうがアメリカ型車両と共に使用する
のであれば160倍が妥当だと考えました。
随分違うものです。
では、アメリカの実際の線路やレールのスペックは
どうなっているのでしょうか。
まずレールの高さです。 アメリカでは日本と
異なり全国に敷設された無数の路線種は
当時100以上もある全く違う鉄道会社により
運営されていたため、それぞれの会社が
採用した規格が異なります。 種類を挙げると
限りが無いので、代表としましてPRRこと
押しも押されぬ第一級鉄道のペンシルバニア
鉄道の例を書きます。
調べただけでも5種あり、レール高さ(”Rail Depth”
と呼ばれ、上部(Head)の上っ面から下部(Base)の
底までの距離)は6インチ弱から8インチまで。
つまり15センチくらいから20センチくらいまで
ということになります。
先ほどのユニトラックとアトラスの再現値はそれぞれ
約32センチと約22センチでした。
それでは枕木間隔についてはどうでしょうか。
アメリカの鉄道の標準規格では、枕木の中心から
中心の距離として19.5インチ、つまり49.5センチ
となっています。 ユニトラックとアトラスの再現値は
それぞれ約80センチと約46センチでしたね。
最初、アトラス製の線路にCODE55という名前を
用いました。 実はこの「CODE(コード)」とは
レール高さの実測値を示しています。
そして注意すべきは、この値はスケールに関係なく
適用されるということです。
CODEの後についている数字は、1/1000インチ
の何倍あるかを示しています。つまりインチ表示の
千分率%ですね。 よってCODE55とは
55/1000インチ、つまり約1.4mm。 最初に
私がデジタルノギスで測定した値とピッタリ一致
します。いや、CODE55という製品なのですから
一致しないと逆に問題なわけですが。
ではユニトラックをCODEで表すとどうなるでしょうか。
2ミリが1/1000インチの何倍あるかを計算
すると約78.4となりました。つまりCODEで
表すとユニトラックはCODE78の線路と言えます。
アメリカのHOゲージ(1/87)ではリアリズムを
追及する場合CODE83がよく使用されるようです。
でも注意してください。途中でお話しましたように
CODEとはスケールに関係なく単に実測値、実際の
高さの値なのです。
つまりHO線路のCODE83とN線路のCODE83
では全く意味が違うわけです。 HOでのCODE83
つまりレール高さ約2.1ミリは実際のレールに
換算すると18センチと少し。 先ほどのペンシー
(PRR)の実寸15~20センチのほぼ中間であり
まさにリアルな高さになるのです。 しかし、もう
お分かりの通り、Nゲージ用線路のCODE83では
実際のレールに換算すると高さ34センチのレール
ということになりとてもリアルとは言えなくなります。
では、Nゲージでリアルと呼べそうなCODE値を
ペンシーの15~20センチという数字から逆算して
みます。 すると、37~49という数字になりました。
よってNゲージならCODE37からCODE49の
線路なら胸を張ってペンシー的にリアル!
と言えそうです。
アメリカで通常手に入る(=ケンズタウンでも手に入る(^^))
Nゲージ用線路のCODEは調べただけでも、
40、55、65、70、80がありました。
このうち米メーカーの中で一番多く線路を製造している
アトラスさんではCODE55とCODE80、そして
「TRUE TRACK」シリーズ(道床付)として
CODE65が製品化されています。
本来、本当のTRUEならCODE45で
作るべきなのでしょうが、残念ながら
特にNゲージでは、この高さのレールで
運転できる車輪のフランジは非常に
小さいものとなり、脱線が頻発してしまいます。
そこで、脱線率の低さとリアリズムの
バランスを考えた結果がCODE65に
なったのでしょう。
また存在する様々なフランジ量に
対応しなければという責任感と
運転重視というスタンスからでしょう、
ユニトラックではCODE78なのです。
しかし、最初の方にお話ししましたように
アトラスさんの枕木の間隔はまさに
TRUEです。
そして……
レールの断面形状も”TRUE”なのでした!!
しかしここでひとつ大事なことを言わせてください。
鉄道模型には様々な楽しみ方があります。
ある一つの楽しみ方の価値観を他に強制して、
ましてや他の楽しみ方を愚弄することは
許されないことだと私は考えます。
リアリズムを追求することは楽しみ方の
一つなのです。 またよく言われることですが、
大人なら発言は「内容」と「立場」と「状況」
(言っていいこと悪いこと、言っていい人悪い人、
言っていい時悪い時)をよくわきまえようと
すべきです。 これらを無視してひたすら
「実際の鉄道ではこうなのだから!」と
正論を振りかざすのはいかがなもの
でしょうか。(すみません、私のことですね(^_^;))
なので、私はこの記事で
何もユニトラックを侮辱しているわけでは
決してないのです。 かつては存在した
(今も?)日本ならではの「お座敷運転」でも
ユニトラックのご利益は計り知れないのです。
というわけで、私は、このユニトラックと
CODE55を必要に応じて使い分けている
のです。 そして今回の調査?で
恥ずかしながら初めて知った
「TRUE TRACK」を
次の機会に絶対手に入れるぞ!
と心に誓っています(^_-)
【ご注意】
Nゲージ車両の中には車輪フランジが
大きなものも多数存在し(古い車両は特に)、
CODE値の小さな線路を使用すると
車輪と枕木が接触しますので運転に
ご使用される場合にはくれぐれも
ご注意下さいませ。
それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/