カリフォルニア・ゼファー(California Zephyr) その1

先頃、ブロードウェイ・リミティッド社(Broadway Limited Imports)

から「California Zephyr」の客車11種が新発売されました。

残念ながらこれらはHOゲージの製品でNゲージではありません。

けれどもNゲージでは既にKATOが11両セットを発売している

ので、この機会にこの列車について2回に分けてお話させて

いただこうと思います。

まずはブロードウェイ・リミティッド社の製品ビデオをご覧

ください。 いえいえ、宣伝を企てているわけではなくて、

Zephyrの走行動画部分を見ていただきたいのです。

下のビデオの、0:48~1:23 と 3:00~3:35です。

もちろん実物ではなく今回の製品を使った動画なのですが、

牽引機から発せられるリアルなサウンドで何か当時が蘇った

ような、なんだか懐かしい魅力的な雰囲気を感じました。

 

  この列車については確か以前にも少し触れたような気がしますが

アメリカでは最もよく知られた列車のひとつです。 運行していたのは

ユニオンパシフィック鉄道でもサンタフェ鉄道でもありません。

シカゴ~サンフランシスコ間をシカゴ・バーリントン&クインシー鉄道

(CB&Q)、デンバー&リオグランデ・ウェスタン鉄道(D&RGW)、

そして、ウェスタン・パシフィック鉄道(WP)の3社が共同で運行

していたのです。

百聞は一見にしかず、まずは自分が作成した路線図をご覧ください。

 

California Zephyr ルートマップ(1950年頃)

California Zephyr ルートマップ(1950年頃)

 

地図の右端のシカゴから左端のサンフランシスコまで、総路線距離

約2,532マイル(約4,051キロ)を3分割して運行されました。

4千キロというと東京からタイやマレーシアに十分到達する距離です。

そして所要時間は約50時間。 まる2日以上かかる長旅でした。

地図を見て、視覚的には一番路線距離の長いCB&Qがメインの

ように感じるかもしれませんが、通過するのにかかっている

時間を知れば、WPも頑張っていたわけです。 そしてD&RGW。

距離も時間も短い一番運行が楽だった鉄道?

いえいえとんでもない! 恐らくこの3社の中で一番気苦労

や仕事量が多かったのはD&RGWかもしれません。

なぜなら、同社の運行区間であるコロラド州とユタ州は

ご存じ世界に誇るロッキー山脈越えがあるからなのです。

3千メートル越えの山々をぬっての走行は、線路の曲率半径

も小さかったでしょうし、渓谷沿いの非常に危険なロケーションも

多々あったことでしょう。  3社それぞれの路線平均時速を計算

してみました。 地図中の時間には停車駅での停止時間も

含まれているので、それを差し引いて平均時速を出してみると。

CB&Q: 時速約97キロ、 D&RGW: 時速約68キロ

WP: 時速約80キロとなりました。

ロッキー山脈越えの過酷さが平均時速に表われています。

けれども、ビスタ・ドームカーという屋根に展望席が設けられて

いる車両を5両程度も連結しているCalifornia Zephyrにとっては

ロッキー山脈はうってつけの視界であったに違いありません。

さて、この列車の編成(「Consist」という単語を使います)ですが

運行を開始した1949年のオリジナル編成は11両。 その後

車輛が追加されたり連結順が変更されたりします。 1949年の

編成は先頭方向から、

荷物車(Baggage Car)1両、ビスタドームカー(Vista Dome Car)3両、

ビュッフェドームカー(Dome-Buffet Car)1両、

10-6スタイル寝台車(10-6 Sleeper)2両、食堂車(Dining Car)1両、

16セクション寝台車(16-Sleeper)1両、10-6スタイル寝台車(10-6 Sleeper)1両、

ドームラウンジ展望車(Dome-Observation Car)1両となります。

一方、これらの客車群を牽引したディーゼル機関車たち。

牽引機(この単語の直訳的でかたい表現では「Hauler」(ハウラー、

ホーラー)、使いやすい表現では「Motive Power」などを使います)

は鉄道会社ごと、年代ごとに異なってゆきます。

運行当初は、3社ともEMD F3A&F3Bです。 編成は

CB&QがA+B+Aを基本としたのに対し、D&RGWが

A+B+B+A,WPがA+B+Bだったようです。

EMDのF型ユニットは開発当初の機体の出力が1400馬力

ourteen Hundred)であったことから命名されていて

貨物用(Freight)のFではありません。 同様に同社の

E型ユニットは1800馬力(ighteen Hundred)から

スタート(E1型、E2型)したのでその後出力が増大しても

「E-unit」が踏襲されます。

さて、カリフォルニア・ゼファーを牽引していたのは

F3A、F3B型ですが、1両辺り1500馬力の出力を有して

いました。ですので、CB&QとWPがトータル4500馬力で

運用していたのに対し、ロッキー越えを使命としたD&RGW

のみ6000馬力が必要だったのでしょう。

その後、このF3型にE5型(2000馬力)、E7型(2000馬力)、

E8型(2250馬力)が加わっていきます(ちなみに、E9型は

2400馬力です)。 D&RGWではこの他にアルコ社(Alco)の

PA-1(2000馬力)、PB-1(2000馬力)でも運行されました

(ちなみにPA-2,PB-2はそれぞれ2250馬力です、

E9に対抗するため2400馬力越えのPA-3の登場も期待され

ましたがついに製造されませんでした)。

編成はA+B+Aでやはり6000馬力です。

一方WPでは、FP7A(1500馬力)、F7B(1500馬力)を

使ったA+B+Aの4500馬力編成も使用されました。

 

さてさて、このような素性をもつカリフォルニア・ゼファー

ですが、次回は牽引機も含めたNゲージの話題を

「その2」としてお届けしようと思っています。

それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/