さて、前回は高速型の花形4-8-4タイプについて
お話しましたが、今回は、これも不動の人気を誇る
関節型(連結型、連節型)蒸気機関車についての
お話です。
関節型は、ビッグボーイ4-8-8-4型などで
既にお馴染みですね。 そもそもこの日本語の
関節型の「関節」は英語の「Articulated」
(アァティキュレイティッド)を訳したものでしょう。
「Articulated」は二つ以上のパーツまたは
部分が自由度のあるジョイントで可動連結
された状態を表しています。 ですから、
ビッグボーイやチャレンジャーのように
駆動輪グループ(ビッグボーイなら
8輪が二つ、チャレンジャーなら6輪
が二つ)が二つ以上あれば全て
「Articulated」と呼んでいいはずです。
しかし、厳密にはこの「Articulated」タイプ
と呼ばれる蒸気機関車は関節型蒸気の
一方の形式しか指していません。
では、関節型のもう一方は何か?
それがマレー式(Mallet type)と呼ばれる
関節型です。
マレー式とは、曲率半径の小さな(急カーブ)
軌道でも高出力の機関車を使えるように
スイスの技術者アナトール・マレー
(Jules.T.Anatole Mallet (1837-1919)
Malletはマレットとは読まずマレーまたは
マレイと発音)が開発した機構です。
蒸気機関車を高出力化するには
ボイラーを拡大したり過熱蒸気(スーパー
ヒーティング)などを利用して蒸気圧を
高めたりするわけですが、それだけでは
軌道に効率よくパワーを伝達できません。
ドライバー数を増やして空転を抑制する
必要があります。 なので、ドライバー(動輪)
の数は開拓時代の4輪から6輪、8輪へと
増加していきました。そしてさらに、10輪
12輪(4-12-2タイプ)、14輪(4-14-4タイプ)
まで存在しました。 ところが、これらの
多輪リジット(固定)型動輪ユニットでは
曲率半径の小さな路線では使用不能だった
わけです。
一見同じに見えるArticulatedタイプと
Malletタイプですが、実は見分けることの
できるポイントがあります。 Malletが提唱した
特許取得済みのこの機構、リアの動輪グループ
で使用済みの蒸気をフロントの動輪グループで
再利用することがポイントです。
つまり、後ろの動輪グループで使用する
高圧用シリンダーよりもフロント動輪グループで
使用する低圧用シリンダーは目に見えて
大きいのです。 なので、このマレータイプは
「Compound-expansion」(混合(混成)拡張式)
と呼ばれ、「Single-expansion」(単一拡張式)
のArticulatedタイプとは区別されます。
ビッグボーイなどのArticulatedタイプ
(Single-expansion)では
リアシリンダー、フロントシリンダーどちらも
高圧の生蒸気を使用しているためシリンダーの
大きさは同一なのです。
次の写真はサンタフェの2-8-8-2マレイタイプ
です。
中にはシリンダーの大きさでは見分けのつかない
マレータイプもあるかもしれませんが、微妙に
大きさが異なる場合もありますので、よく目を
凝らしてみてみてください。
また、アメリカでも、マレータイプを含めて
Articulatedタイプと総称することも多々あります
ので注意が必要です。
日本語でも厳密には「マレー(混合拡張)式関節型」、
「アティキュレイティッド(単一拡張)式関節型」と
区別すべきなのでしょうが、特にこれらを区別する
必要のない場では関節型、連結型、連節型等で
総称しても構わないのかもしれません。
それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/