我々は、日本の国土は山地の占める割合が
かなり多いということを小学生の頃から
学んでいます。
さて北米ではどうでしょう。 国土面積が
広いため割合から言うと日本には遠く
及びませんが、山岳地帯面積自体では
ご存じロッキー山脈を筆頭に広大な山林を
有しています。
山地とくればやはり鉄道の勾配が気になります。
北米のメインラインの中で一番勾配のきつい
場所は、ノースキャロライナ州にある
サルーダ・グレード(Saluda Grade)の
4.7%と言われています(100フィート進んで
4.7フィート登る)。 けれどもノーフォークサザン
鉄道が2002年前後にこの路線を閉鎖後は、
BNSF管轄のラトーン・パス・グレード
(Raton Pass Grade)の3.3%が繰り上がって
いるようです。 いずれも碓氷峠の6%越え
には及びませんが、メインラインとしては
かなりの急こう配ですね。
もちろん日本でもそうですが、メインライン以外
となると森林鉄道や炭鉱で急こう配路線は
いくらでもあります。 そんな急こう配で
活躍した特殊ギヤ付蒸気機関車は
「Geared Locomotives(ギヤードロコモーティブ)」
と呼ばれ、その方式によって呼ばれ方が
異なります。
ボイラー容積や車輪数に制限の出る
作業場所でトルクを稼ぐにはやはり
ギヤ比を使うしかありませんでした。
一番有名なのが「Shay(シェイ)」です。
ギヤシステム等で特許をもつシェイさん
(Ephraim Shay)がライマ社
(Lima Locomotive Works)と共同で
開発・製造しました。 各種のデザインを
合わせると総計2,700両を超える
「シェイ」を製造し、各地に届けました。
右サイドにしかない三つのピストンで
シャフトを回転、前後部の全てのギア付
車輪までトルクを伝えます。
このピストンを装備するため、ボイラーは
左寄りにオフセットされ、重量的にも、
回転による反動にも対処されています。
リベットに囲まれた「LIMA」のプレートが
誇らしげです。
恐らく次に有名なのが「Climax(クライマックス)」
でしょう。
シェイのようにクランクシャフトがよく
見えませんが、両サイドにある
ピストンの中央、つまりボイラー下に
ギヤボックスと共に設置され、
そこからリア用とフロント用の
2軸に分配されます。 そしてリアと
フロントの車体下にそれぞれある
ギアボックスでさらに各車軸へとトルクが
分配される構造です。
水平から斜めに持ち上げられた
両サイドのピストンが魅力的で、
また大きな特徴です。
ヘッド下のウッドデッキにボイラーに
向かって立つと、目の前の銘板が
きっと大迫力なのでしょうね。
この他にも、「Heisler」やシェイ特許切れのあと
シェイ型をスーパーヒーティング仕様などに
効率アップ改良された「Willamette」があります。
私自身は、森林鉄道と言えば日本の
木曽森林鉄道を思い出しますが、
ご存じ第一号はボルドウィン製です。
ドイツ製などとの納入業者選定の中で
価格がより高いにもかかわらず
その性能と安定した品質から
日本人はボルドウィンを最終選択した
と聞いています。
1号機が納入された時期はちょうど
第一次世界大戦の開戦時期と
重なり、この頃のボルドウィン社は
サンタフェ(ATSF)向けに2-8-2
MIKADOタイプを量産していました。
同じ工場かどうかは私は知りませんが
巨大なミカドタイプに比べれば
まさに赤子のような機体です。
それでも、ミカドの設計技術やノウハウが
ボルドウィン1号にもきっと
宿っていることでしょう。
洋の東西を問わず、
人々と一緒になって、すすけた小さな
ボディで懸命に働く姿。
人間味に溢れ、恐らく仲間内では
同僚扱いされていたのだろうなと、
想像してしまいます。
誰しもその一コマを
ジオラマ化したいと
思うことでしょう。
それでは皆様、また次回までさようなら
(^0^)/