ジャズとひばりと未亡人。

最近はあまり聴かないのですが、一時ジャズに

はまったことがありました。 特に旋律の優しい

ピアノがお気に入りで、自分のイメージに合った

曲、プレーヤーを探し続けました。 そんな中で

割と初期に出会ったのがジャズピアニストであり、

かつまた作曲家としても有名なオスカー・ピーターソン

(Oscar Peterson)でした。

このピアニストの有名なアルバムに1962年

リリースの「NIGHT TRAIN」(夜行列車)という

有名な作品があります。 そして、そのレコード

ジャケットがこれなのですが…。

オスカー・ピーターソンの「Night Train」。

オスカー・ピーターソンの「NIGHT TRAIN」。

さてここで問題です。

この列車の名前、鉄道会社、そして牽引機と

ペイントスキーム名は何だと思われますか?

全てご存じでしたらこれから先はお時間の

無駄になってしまいますので読んでいただか

なくてもいいかもしれません(^^;

 

まず私がすぐわかったのがペイントスキーム

でした。 これはサザンパシフィック鉄道で使用

された「ブラック・ウィドウ(Black Widow)」という

スキームです。 1957年から1年間ほど使用

された同鉄道の「ハロウィーン・スキーム」の

直前に使用されていたかなり有名な塗装デザイン

です。 デザインが割に複雑で色合いも多様なので

施工が高価なため、デザインも色使いも安価で済む

ハロウィーンスキームに変更となったようです。

そのブラックウィドウ、よく知られているため模型で

探すのはゲージを問わず至極簡単です。

Black Widow Paint Scheme.

Black Widow Paint Scheme.

 

これで鉄道会社が判明したのであとは列車名。

サザンパシフィック鉄道と言えば誰もがまず最初に

挙げるのが「デイライト特急」かもしれません。

コーストデイライト(Coast Daylight)とも呼ばれる

全米でも5本の指には必ず入る超人気列車です。

この列車が海沿い(だからコースト(海岸)です)

を走るのに対し、並行して山中を走る特急も

ありました。 ここでずっと以前に「バレーフライヤー

(ATSF)」のときちらっと触れた「サンワキーン・

デイライト(San Joaquin Daylight)」です。

サザンパシフィック鉄道の中の路線としては

合致するのですが、まずデイライトではペイント

スキームが異なります。 デイライト系では

ご存じのオレンジ色塗装になりますし、そもそも

これらはその名の通り日中運行されました。

ではこの路線で有名な夜行列車は?

「Lark(ひばり)」です。1941年から1968年まで

運行された寝台車のみで構成された(バッゲッジと

RPOは含みます)寝台特急です。

サンフランシスコからロサンゼルスまでの約750キロを

夜通し走り続けた夜行列車です。 到着するのは

日が変わった明け方だったのでしょう。「ひばり」は

文化的に「新しい日」の象徴なのだそうです。

そして牽引機なのですが、蒸気機関車から

始まって時代と共に変化してゆきます。 蒸気機関車

はもちろんGS-4をはじめとするGSシリーズですが、

サザンパシフィックのディーゼル化で最初に使用された

のがEMDのEユニットとAlcoのPAです。

ただこれらは記録上はほとんどが、

スカーレット&シルバーのゴールデンステートスキームか

オレンジのデイライトスキームだったようです。

さてこのアルバムのリリース年は1962年です。

ブラックウィドウスキームが施された50年代を

考慮するとやはり写真のディーゼルはEMDのF7、

もしくはFP7が妥当であると推定します。

以前にもお話しましたが、EMD製ディーゼルの

ネーミングにはルールがあります。 導入期の

パワー(馬力)の頭文字がネーミングされています。

SWやNWなどのヤードスウィッチャー、

「S」は600馬力(Six Hundred)、「N」は

900馬力(Nine Hundred)、そして

「F」が1400馬力(Fourteen Hundred)で

「E」が1800馬力(Eighteen Hundred)。

日本語のサイトやたまに英語のサイトでも

FユニットのFは貨物用(Freight operation)の

「F」と書かれている説明をみますが少なくとも

EMDオリジナルルールではありません。

それならEユニットは基本的にPユニット

(Passenger operation)となるべきでしょう。

そんなこともあって自分は情報検索には

英語サイトしか見ません。 情報の鮮度、誤訳の

リスクを気にするからです。 あっ、ここで映画

「アンタッチャブル」でショーンコネリー扮する

いぶし銀警察官が言った言葉を思い出しました。

「痛んだり薬のかかったリンゴを食べるのが

嫌なのなら、自分で木からもぎなさい」、と。

 

でFユニットです。 F7とFP7は同じ

1949年から1953年まで製造された

兄弟ですが、FP7ではF7から後部を

約1.2メートル延長されました。

なので側面後部の丸窓(Porthole)付近

を確認できれば区別がつくようです。

その他にも、フロント台車後部の床下機器

が異なっているとのことです。

ですから、フロントマスク側面だけの

このアルバムジャケット写真だけでは

私にはこれがF7なのかFP7かは

わかりませんでした。  マーズライト

(Mars Light)下のロードナンバーが

はっきり読み取れれば一件落着なのですが。

 

さて問題はなぜオスカーピーターソンの

レコードジャケットにサザンパシフィック鉄道

なのかです。 そもそも彼はカナダの

モントリオール出身で活動もほとんどが

カナダに関係しています。 調べてみても

父親がかつてカナディアンパシフィック鉄道の

ポーターであったこと以外、鉄道に関係する

内容には行き当たりませんでした。

そこでこのレコードを出したレーベル会社である

ヴァーヴ(Verve Records)について調べてみた

ところ、1956年創立で本社がカリフォルニアの

サンタモニカだったのです。 はい、カリフォルニアは

まさしくサザンパシフィック鉄道のおひざ元であり

サンタモニカはロサンゼルスのすぐ西、太平洋岸

にあります。 つまりコーストラインの直ぐ南です。

これは私の勝手な推測ですが、同社はオスカーの

「夜行列車」というアルバムをリリースするに当たり

本社近所で当時運行されていたLarkを撮影したの

ではないのか。

どなたかもしも真相をご存じであれば

コメントをいただければと存じます。

 

それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/