私事になってしまうのですが、私は学生時代に
金属材料の勉強をしていたことがあります。
世にいう「専門」ということになるのですが、
胸を張って、私は金属材料の専門家です!
とは言えない程度の実態であります(^^;
しかしながら、最近ふと、線路のレールの材料
はなんぞやと今頃になって思ったのでした。
もちろん、皆さんもご存じのとおり、線路をを見れば
お馴染みの茶色い錆が出ているわけですから、
鉄が主成分であることはわかっておりました。
では、レールは100%鉄なのでしょうか?
そこがわからなかったのであります。
少し調べてみると、懐かしい技術用語や図に
ご対面し、教えていただいた先生のお顔までも
思い出してしまいました(^^
そもそも日本語では「軌条」と呼ばれるレールは
欧米から輸入することから始まったようで、
日本では1901年にご存じ八幡製鉄所が
できてから生産が始まったとのことです。
しかし、100%自給自足ができるまでには
約25年かかり、1926年ごろにようやく
輸入する必要が全くなくなったようです。
さて、問題のレールの材料ですが、結論から
いいますと、100%の純鉄ではございません。
錆や強度の問題から純鉄では力不足なのです。
レールに求められる性質は、硬くてかつ折れない
こと。 硬さがないと車輪であっという間に削れ
重さで曲がってしまうことになるわけです。
では硬ければ折れないのでしょうか? 答えは
全く逆で、標準的な材料は金属に限らず硬くなると
もろく(折れ、割れやすくなる)なるのが一般的です。
ご存じダイアモンドは世界一硬い材料として知られて
いますが、普通の金槌でたたけば割と楽に割れてしまう
ことはあまり知られていないようです。
つまり、レールに求められる硬さと折れにくさ(靱性:
じんせい)は相反する性質であり、この両方のバランス
をとることがポイントになります。
で、肝心のレール材料の話に戻ります。
鉄にカーボン(炭素)を微量加えると急激に硬さが増します。
しかし前述のようにそのままでは同時にもろく折れやすく
なってしまうので、マンガン(Mn)を微量加えることで、
靱性を改善しているのです。 いわゆる普通レールの場合
(規格:37A,40N,50N,60)、カーボンは0.55~0.75%、
マンガンが0.60~1.10%添加されているそうです。
ところが材料でここまで性能を上げても、まだ必要な強さには
足らないのです。
金属には、生物の細胞と同様な組織があります。もちろん
生きてるわけではありませんが、全く同じ材料の配合比
であっても、その組織形態が異なれば性質は全く違ったもの
となります。 よって、組織の種類によって硬さ、もろさも
大きく変わるわけなのです。
さて、先程のカーボンとマンガンが配合された鉄、これに
製造過程で何度も熱間圧延と呼ばれる手法を使って
硬い組織を作り上げるわけなのです。
まとめて言うと、レールに必要な硬さと靱性は、
カーボンとマンガンの添加という材料からの
アプローチと、熱間圧延によって形成される
硬い組織の制御の両方を組み合わせて、
成し遂げられているわけです。
現在日本で製造されている(新日鉄住金、JFE…)
レールはその半分以上が北米に輸出されているそうで、
アメリカの巨大貨物や巨大ディーゼルの過酷な重量
地獄でその高品質な耐久性をいかんなく発揮している
そうです。
今回はちょっと突っ込んだ軌条のおはなしでした。
それではみなさま、また次回までさようなら(^0^)/