魔のS字カーブ!? - ボディマウントカプラーを考えてみる -

本日も

ケンズレールロードに

お越しいただき

ありがとうございます。

 

さて、先日

ボディマウント型カプラー搭載の

長尺車両に関しまして、

お詫びをさせていただきました。

車両が長くなると

曲率の小さなカーブに対しまして

許容度が小さくなるのですが、

商品説明にて

ご注意喚起のタイミングが

大変遅くなってしまいました。

誠に申し訳ございません。

 

ボディマウント型カプラーは

昨今のアメリカ型で

主流になりつつある

リアル派の装備です。

ただし、

実車感覚を味わえる一方、

曲線路の許容範囲は

狭くなる特性をもっています。

 

「きついカーブは

苦手なんやね」

 

うん、そうなんだよ。

そして、

車両の長さが

長くなればなるほど

必要となるカーブの曲率半径は

ぐっと大きくなるんだよ。

 

「ほな、

なんでそんな

使いづらなることを

わざわざするん?」

 

話は長くなるんだけどね、

アメリカの鉄道模型業界は

何年も前に

大きな決断をしたんだよ。

「Nゲージも

アーノルドカプラーは

やめよう!」

ってね。

 

建前としては、

「大人も納得できる

リアルなスケールモデルを

目指すために必須」、

ということがありますが、

恐らく、それ以外の

いろいろな事情も

あったことでしょう。

確かに

見た目はリアルになりますが、

機能的には

アーノルドタイプの方が

守備範囲が広く、

扱いも楽です。

けれども、

やはりスケールモデルとして

車両を鑑賞すると

その大きさと形状は

???となります。

 

少なくとも

そこからの流れは

「脱トイトレイン」が

実践されています。

アメリカ型車両が

収められているケースの

多くには

「14歳以上のための製品です。

これはおもちゃではありません。」

という注意書きがあり、

大人用であることを

名言しています。

 

車両周りの小さくて

尖ったパーツや

微小パーツが

組み合わされてる

ナックルカプラーは

小さなお子様にとっては

危険だからですね。

 

大人の趣味としての

流れは、

カプラー種にとどまらず

マウント方式にも

及びます。

それが、

実車同様の

ボディマウントタイプに

なるわけです。

 

その結果、

走行に適切な

曲線路の曲率半径が

より大きくなっているという実情が

はっきりと伝えられないまま

今日に至っているのが実情です。

 

また、大きすぎるカプラーと共に

スケールモデルとして

見栄えが好ましくない点として、

カーブを走行中の車両の

オーバーハング量の問題が

あります。

 

「オーバーハングてなに?」

 

曲率半径の小さなカーブを

長い車両が通過するときね

レールの外側に

車体の先端やおしりが

大きく飛び出すでしょ。

その「飛び出し量」のことだよ。

 

せっかく精密な外観でも

大きなオーバーハングは

リアル感を損ない

無粋であると感じるファンの方も

多くいらっしゃることでしょう。

もちろん、

オーバーハングは

より大きな曲率の

曲線路を使うことで

改善されてゆきます。

実際の線路製品を見ますと、

例えばアトラス製の

CODE55シリーズには

R20インチ(500mm)や

R30インチ(700mm以上)、

そして、それ以上には

フレキシブル線路が

ラインナップされており、

ちゃんと

受け皿が用意されています。

 

「そやけど、

今もってる きついカーブでも

遊びたいやん、おじちゃん!」

 

うんうん、そうだよね。

そこで今回は、

ボディマウントタイプの車両を

走らせた場合、

どれくらいのカーブがいいのか

わるいのかを

詳しく考えてみたよ。

 

まず最初に

曲線路が作る

典型的な3パターンを

絵に描いてみました。

レイアウトに現れる曲線路の典型的な基本3パターン。

カーブを描く実線を

レールのセンター(中心線)と

お考えください。

青い四角が車両です。

ボディに搭載された

青線のカプラーを

首振りさせない状態で

連結させずに走行させたときを

描いています。

ここでは、

カーブに進入したときに、

レールのセンターから

カプラー先端(青丸)が

離れた距離を

オーバーハング量としています。

(ボディ先端はより大きく

オーバーハングします)

 

カーブの入り口での

状況を見てみましょう。

後方車両のカプラーが

まだレールセンター上にあるとき

前方車両は

すでにカーブに進入し

カプラーが外側に振り出ます。

実際の走行では

互いに連結されているので

2つのカプラーシャンク(支柱)は

力がかかる

みどり線上に位置することになります。

そのときに

前方車両のカプラーが

振り出さなければならない

角度が

赤色の扇形です。

 

「うしろの車両も

ちょっとだけ

振り出してるけど

前のより

ぜんぜん少しやね。」

 

そうだねー。

それに、みどりの線の中心は

まだレールセンターより

少し外側にあるから

前の車両のカプラーは

それほど大きく振り出さなくても

大丈夫なんだ。

 

両方の車両が

カーブ上にあるときは、

どちらも同じ方向に

カプラーを振り出すので

レールセンターからの

オーバーハング量は

大きいものの、

両車両が実際に振り出す角度は

図のように

一番少なくなります。

 

「次はいよいよ、

魔のS字やね。

けど、

なんで魔なん?」

 

絵の赤い扇型を見てごらん。

S字を通過するときが

一番大きいでしょ。

しかも、

前後どちらの車両も

逆方向に

目一杯振り出す必要があるから

条件が一番厳しく

なるんだよ。

 

「なるほどー、

カーブの入り口と

曲がってる最中が

だいじょうぶでも

S字で脱線しやすいんは

そういうことか! (^_^)」

 

その通り!

もし、カプラーが

S字を通過するときに必要な

この振り出し量に

対応できないと、

車両が傾いたり

脱線したりするというわけなんだよ。

 

「魔のS字カーブの意味が

ようわかったわ。」

 

「そやけど、おじちゃん、

しくみはようわかったけど

これやと、

どれくらいのカーブとか

どれくらいの長さの車両が

大丈夫とか、

危ないとかわからへんやん。」

 

おー、

鋭いつっこみだねー・笑・

じゃーねー、

今日は特別に

この話を

数字で考えてみよう。

けれど、

ちょっと難しくなるから

覚悟しなよー・笑・

 

ではでは、

このカプラーシャンクが、

一番条件として厳しい

S字通過のときに

振り出す必要のある距離

(オーバーハング)を、

図に描いてみましょう。

レール中心からカプラー先端までの距離をオーバーハング量として考えます。

この図では

カーブがS字になっていませんが、

最初の図からお分りの通り、

レールセンターから

カプラー先端までの距離が

S字通過のときに必要な

最大オーバーハング量になります。

(この図では、

2つのカプラーが連結すると

必要なオーバーハング量は

もっと小さくなります)

 

「わー、

むずかしなってきたなー(^^; 」

 

ごめんね、

でも、図の中に描いてある

カーブが作る円の中心と

車両の中心で作る

直角三角形が

わかるでしょ。

これを利用するんだよ。

 

車両の中心をA、カプラー先端をB、カーブが作る円の中心をOとすると、△AOBは直角三角形となる。

図のように、

知りたいオーバーハング量を

」とします。

線分AOは

カーブが作る円の半径「」となり、

カプラーの端から端までの

車両の全長を「」とすると、

線分ABはちょうどこの半分の

/2」となります。

そして、

線分BOは、半径「」と

オーバーハング量「」の

和となります。

最後に、

この直角三角形AOBに対して

三平方の定理を使って

整理すると

きれいな「」の二次方程式の

完成です。

 

「おじちゃん、ずるいわー、

つこてる算数の教科書には

まだ、にじなんちゃらとかは

でてこーへんもん(;_;)」

 

大丈夫、

ここは詳しくわからなくてもいいよいいよ。

オーバーハングの量 は、

車両の長さ と、

カーブの曲率半径

両方で決まるんだということだけ

覚えといてね。

 

さて、

二次方程式の

解の公式を使うと

オーバーハング量「」が

導き出されます(正の値のみ)。

この式をいくら眺めても

よくわからないので

オーバーハング量が

車長と曲率半径で

どのように変わるか

グラフ化してみましょう。

必要なカプラーのオーバーハング量は、車両の全長に対して二次的に増加します。

知りたいカプラーの

オーバーハング量、

すなわち

カプラーの片側への振れ幅(量)

ミリメートル単位で

縦軸に示してあります。

一方、横軸には、

通過させる車両の

カプラー端までの

全長

同じくミリメートル単位で

示してあります。

 

車両の長さが長くなると

線路の曲率半径が同じでも

必要なカプラーの振れ幅が

大きくなってゆくことが

わかります。

また、

同じ車両の長さでも

通過する曲率半径が

小さくなると

同様に

大きなカプラーの振れ幅が

必要になります。

 

6本あるグラフは、

6種類のカーブ曲率についての

車両全長と

オーバーハング量の関係ですが、

これはあくまでも

計算による理論的な値です。

 

通常の車両では、

ナックルカプラーの

片側への振れ幅(量)は

3.5ミリから5ミリ程度で

それを

赤線で囲んだ範囲(薄みどり)で

表しています。

 

横軸の下には、

車両の製品名にある

フィート表示の全長を

参考値として

併記してみました。

 

「おじちゃん、

グラフの見方が

よーわからへんから

おしえてーな」

 

了解!(^_^)

まず、使いたい車両の

カプラーが

片側に最大で

何ミリ動くかを

調べてください。

次に、

S字カーブで使いたい

曲線路の曲率半径を

ミリ単位で調べてください。

例えば、

カプラーが片側に最大4ミリ動き、

使いたいカーブの曲率半径が

R280mmだとしましょう。

図中の6本の中で

一番左の線上を、

左の縦軸を見ながら

4ミリのところまで

たどってみてください。

そこが、

振れ幅4ミリを示す横線と

R280ミリのグラフとの交点になります。

そして、その交点から出発して

今度はまっすぐ下の横軸に向かいます。

すると、

ざっくり90ミリくらいの

横軸の場所にたどり着きますね。

つまり、これは

カプラーの片側最大振れ幅が

4ミリの車両に、

曲率半径R280mmからなる

S字曲線路を通過させたい場合、

カプラー端までの全長が

約90mmまでの車両なら

ストレスなしで通過できることを

表しています。

これを、逆に考えると、

全長が90mm以上の車両を

曲率半径R280mmからなる

S字曲線路で楽しみたい場合は、

カプラーの振れ幅が片側に

4mm以上必要であることが

わかります。

 

あれれ、

なんか変ですねー。

そうですね、

最初に知りたかったのは

どれくらいの車長だと

どれくらいの曲率半径が必要か

ということでしたね。

それでは、

縦軸を線路の曲率半径にして

グラフを

書き換えてみましょう。

使用する車両のカプラー端までの長さとカプラーの片側振れ幅がわかれば、必要な最小曲率半径がわかります。

「あー

やっぱりこっちの方が

ぜんぜんわかりやすいわ(^o^)」

 

ごめんごめん、

最初に何が知りたかったのかを

さっぱり忘れていたよ /(^-^;;

 

横軸から

使用する車両の長さを選び

相当する

カプラー振れ幅の曲線を使って

縦軸の値から

必要な線路の曲率半径がわかります。

例えば

カプラーが片側に

4ミリ振れる

車長60フィート程度の車両なら

曲率半径600mm以上で

問題なく通過可能というわけです。

 

ただし、ご注意いただきたいことは、

これらのグラフから算出される値は

車輪とレールの

左右への遊びが

全く無い場合の

理論の値であるということです。

実際には、

車輪とレールには

かなりの遊びがもたせてあり、

この遊びが

カプラーのオーバーハング量に

与える余裕度は

2mmを大きく超えるものと

思われます。

つまり、実質的な

縦軸の値は

カプラーの振れ幅に

この遊び分(余裕度)が加わることに

なります。

例えば、

一番長い89フィート長の

車両を考えた場合、

カプラーの振れ幅が

5mmあったとしても

グラフ上では、

曲率R800mm程度以上の

曲線路が必要となります。

けれども実際には、

車両全長が長くなればなるほど、

この車輪の遊び量が関係する

カプラー振れ幅への加算量が

大幅に増加するため、

R600mm以下でも

楽しめそうだという

推測ができるわけです。

 

ちなみに、

台車搭載カプラーの場合、

台車のセンターピン中心から

カプラー先端までの距離の2倍を

このグラフの横軸に当てはめれば

同様の推測ができます。

多くの車両では、

この値

(台車のセンターピン中心から

カプラー先端までの距離の2倍)は、

車両全長よりも

かなり小さくなるため、

台車一体型カプラーが

いかにカーブ通過能に対して

有利になるかが

おわかりいただけると

思います。

 

そしてまた、

そのような実質的リスクを承知で

あえてボディマウント型に

駒を進める

チャレンジ精神、

或いは

思いの実現への意欲には

頭が下がります。

 

「あんまり

ふかいこと考えんと

ただ、やりたいこと

やってるようにも

見えるけどな (^^; 」

 

ははは、

そういう見方もあるね ・笑・

 

大の大人が夢中になれる

Nゲージへ。

外観の精密化に始まり

サウンドの発生や

デジタルでの実物どおりの動作、

そして、

ボディマウントのナックルカプラー。

目指す世界に向かって

着実に歩みを進めています。

 

レイアウトはスペースの

外壁沿いに作るのが基本と

されるアメリカ。

できるだけ

ゆるやかなカーブを再現し、

実物に近い

小さなオーバーハングで

走行させることが優先されます。

車間で屈曲しない

大型車両の長編成などは

なんと優雅で

壮大な風景でしょう。

そんなところを大事にする

アメリカ型の精神が

垣間見えるように

感じます。

 

「日本でもいつか

そんなアメリカ型専用レイアウトが

見れるようになるとええなー(^-^)」

 

ほんとにそうだねー (^_^)

 

大変長くなってしまいましたが、

今回は、

ボディマウントカプラーについて

深く掘り下げてみました。

 

それでは皆様、

また次回までさようなら (^0^)/